『シルバー事件』の予告について
各話の終わりには次のシナリオのタイトルが表示されるという予告がされます。最近のアニメで良く目にするエンドカード的なものです。
その予告は月を背景にしたシンプルなものでただ文字でタイトルが記されるだけなのですが、毎回そこにはディレクターの須田剛一さんからのメッセージが一言だけ入っています。そのメッセージは大抵が彼が愛してやまないロックバンド、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)や、ジョイ・ディヴィジョンの後進バンドNew Order(ニュー・オーダー)の曲のタイトルが使われています。曲にインスピレーションを得てシナリオが書かれたのかもしれません。
Joy Divisionは有名な「Love Will Tear Us Apart」ぐらいしか知らず、New Orderも「Regret」ぐらいの知識だったので、このゲームを初めてプレイした時に酷く感銘を受け、CDをレンタルして聴きまくった事を覚えています。素晴らしい楽曲に出会えた事に感謝したいです。
以下に予告に使用された曲の一覧とちょっとした感想を記載しています。感想は作中のネタバレが含まれておりますのでご注意ください。
予告に使用された曲
case#0:lunatics
New Order:VANISHING POINT
リリース:1989年
収録アルバム:Technique

長いイントロが特徴的で、その後すんなり入るボーカルと繊細なメロディが心地良いです。長いイントロにシルバー事件イズムを感じてしまうという不思議な感覚。
プレイヤーと、24署の凶悪犯罪課メンバーと、リパブリックメンバー、そしてウエハラカムイという存在が運命的に出会ったその事件を示すのにこれ以上無いセレクトだと思います。その消失点にこそ真実があるのだと感じさせられます。
case#1:decoyman
New Order:BIZARRE LOVE TRIANGLE
リリース:1986年
収録アルバム:Brotherhood

これぞテクノ!という感じの曲調に、ちょっと似つかわしくない深刻そうな歌詞の絶妙なマッチが良いです。タイトルも気に入っています。浮気された男の曲という解釈で良いのでしょうか?
単純に考えればアヤメとカムイの関係性を重ねているのかもしれませんが、勝手なイメージながらスミオがアヤメに愛を囁いている時のテーマ曲だと思っています。あのシーンのテンポの良さはこの曲のテンポからきているんじゃないかと思わせられます。そう思うと、あの時の会話内容と状況の相違にも納得出来る気がします。
case#2:spectrum
Joy Division:Love will tear us apart
リリース:1980年

ここでジョイ・ディヴィジョンの代表曲が来るとは思いませんでした。「愛は我々を引き裂いてしまうだろう。」というセンセーショナルな歌詞に、純粋な気持ちを持った2人の子供の関係を重ねたと思われます。実際には作詞をしたボーカルのイアンの妻と愛人との三角関係の葛藤が書かれたと言われていますが、彼が抱いていた苦悩や罪悪感等に子供の気持ちとの差は然程無い気がします。
しっかし本当に恰好良いな!!
case#3:parade
New Order:regret
リリース:1993年
収録アルバム:Republic

この曲が収録されているアルバム名は主人公が最初に所属していた特殊部隊名と一緒です。随所に彼らへの愛が散りばめられていますね。
とにかくイントロが大好きで、大好きなまま最後まで聴き終えちゃう曲です。爽やかさの中にどこか焦燥感を感じさせるサウンドは想像力を駆り立てます。
本来この曲は恐らく大人の男女の別れの歌だと思われます。しかしパレードで使用されると印象がガラッと変わってしまいます。少年時代だったスミオの胸に秘めたリルへの恋心、そして彼女の死に対する懺悔の歌にも聴こえるし、大人になったスミオからリルへの本当の意味での別れの歌にも聴こえます。スミオら3人が準備をし続けている間、ずっと歌詞の内容を考えていたのではないかと思うと切なくて泣けます。パレードは「regret」含めて作中で一番好きなシナリオです。
case#4:kamuidrome
New Order:THE PERFECT KISS
リリース:1985年
収録アルバム:Low Life

ベースが主旋律を弾き、歌が終わった後は全員でセッションという流れがとにかく恰好良い1曲。歌い慣れていないヴォーカルもまた味です。
単純にオールドマンとニュートラルの孤独と、2人が出会った感動から理想とする世界を求めるまでに至る経緯を曲に重ねていると思われます。本作のシナリオは曲に合わせて作られているのだと思っています。
case#5:lifecut
New Order(England New Order):World in Motion
リリース:1990年

サッカーワールドカップのイングランド公式応援歌として発表された楽曲なので、「君なら出来る!俺なら出来る!それを見せつけてやれ!」という松岡修造さんばりの熱いメッセージ曲となっています。この曲が長い間プレイして来た物語の最終話の、主人公の謎が明かされ真相が明るみとなったシナリオとどう繋がるかと言えば、やはり最後のクサビの台詞そのままなんだと思います。全ては自分次第なんだという人生の先輩としての厳しくも優しいアドバイスにこの応援歌は相応しいと思います。
report*1:YUME
New Order:All the Way
リリース:1989年
収録アルバム:Technique

聴き易くてポジティブな1曲です。応援歌的なソングでもあると思います。元気が出ます。
自分らしく生きていこうとする姿は、フリーのルポライターとしてのモリシマトキオという男の理想を表現し、そしてそんな彼を紹介する第1話に相応しいセレクトだと思います。アカミミとだけはずっ友だよ!という隠された意味もあるのかもしれません。なんて。
report*2:HANA
New Order:True Faith
リリース:1987年
収録アルバム:Substance

大人であるモリシマから、いや、モリシマとエリカの視点から見えた久しぶりの子供の世界。彼らの純粋さを目の当たりにして大人の汚さと現実の非情さを再認識しちゃったモリシマの精神状態を比喩したのでしょうか。
薬物依存の歌なんて確かにプラシーボというハードボイルドの世界観でしか使用出来ないよなぁ、と思わず納得しちゃいました。
report*3:TSUKI
New Order:Shellshock
リリース:1987年
収録アルバム:Substance

ロック色が強く打ち出された1曲。メッセージ性の強さと聴き易いリズムが良いです。
Shellshockは戦争へ行った兵士の戦闘といった経験が、帰還後にも心身ともに影響を与えるという症状のかつての呼称のようです。こう聞いたら、あれはまさしくミクモボーイズにとって戦争だったし、この曲は20年間という長い歳月を表現したミクモボーイズのテーマソングと言えると思います。また、プレイヤーが作中で語られた衝撃的な真実を知った時のショックと、この後まだ続いていく物語で更にプレイヤーを待ち受ける驚愕の展開への布石でもあると個人的に思っています。
report*4:AI
New Order:Love less
リリース:1989年
収録アルバム:Technique

オールドマンとニュートラルの野望が大人の手によって潰されてたその裏で、モリシマとエリカの話し合いも決裂していました。エリカがモリシマを引き止める状況が歌詞と多少重なって見えるし、既に2人の関係が終わったものであるというのも引っ掛かけているのかと想像します。
report*5:HIKARI
New Order:Blue Monday
リリース:1983年
収録アルバム:Power,Corruption & Lies(権力の美学)

ジョイ・ディビジョンのボーカルであるイアンの死を知ったメンバーの心境を歌った曲にしてニュー・オーダーの代表曲。テクノポップ満載なのにやはり歌詞は状況が状況なだけに悲壮感が漂っています。
「HIKARI」ではモリシマが過去の事件を辿り、自身と主人公とカムイとアヤメ、果ては真実と向き合う姿を描いています。この曲が選ばれたのはモリシマが全てを理解した時の気持ちと、イアンの死を知ったメンバーの心境とをリンクさせているからだと思われます。
report*6:YAMI
New Order:Singularity
リリース:2015年
収録アルバム:Music Complete

HD化に伴い追加された新規シナリオには、シナリオ作成時に発表されたと思われるニュー・オーダーの楽曲が使用されました。10年ぶりの新作アルバムには須田剛一さんも大喜びだったのではないでしょうか。ニュー・オーダーらしさを残したまま進化した重厚な音楽が恰好良いです。
新規シナリオには正直びっくりしましたが、この曲のタイトル通りモリシマは作中でもバグと呼ばれる程特異な存在です。そして彼はカムイでありながらカムイ以上の存在という更なる特異性を手に入れてしまったようです。彼はこの先どう生きていくのか。それは続編にて語られる事になるようです。最後の穏やかな寝顔が忘れられません。
case#25:white out PROLOGUE
Joy Division:Dead Souls
リリース:1981年
収録アルバム:Still

ライブ音源という事もあってより一言では言い表せない何とも言えない味があります。陰鬱で先の見えない漠然とした不安と恐怖が湧いて思わず引きずられちゃいますね。
誰が呼んでいるのか、事件か、はたまたカムイか。カムイという概念がそう数年で容易く消える訳が無く、悲劇が再び始まろうとしている事を予感させるにピッタリの曲だと思います。『シルバー事件25区』という作品がプレイヤーを呼んでいます。
自分勝手な解釈・感覚で話しましたが、これらの曲がより『シルバー事件』を魅力的に仕上げているのは言うまでも無い事実です。ここまでシナリオと曲がリンクしている事を考えると、曲を元にシナリオが作成されたという想像もあながち間違いでは無いと思えます。その場合は曲のセレクトこそが須田剛一さんからのメッセージとなるのではないでしょうか。
これ以外にも素晴らしい曲が多いので是非多くの方に聴いて欲しいです。
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